新規事業は、希望と興奮に満ち溢れている一方で、想像以上の困難や挫折がつきものです。理想と現実のギャップに直面し、心が折れそうになる瞬間は誰にでも訪れます。本稿では、そんな苦境に立たされた時に、再び前を向き、挑戦を続けるための3つの重要な視点を提供します。新規事業の成功は、困難を乗り越え、成長し続ける力にかかっています。この3つの視点が、あなたの事業を成功に導く一助となれば幸いです。
1. なぜ、この事業を始めたのか?原点回帰で情熱を再燃させる
新規事業が難航すると、日々のタスクや問題解決に追われ、当初抱いていた熱意や目的を見失いがちです。しかし、心が折れそうになった時こそ、なぜこの事業を始めたのかという原点(パーパス)に立ち返ることが重要です。
創業時の熱い想いを思い出す
事業を始めたきっかけ、解決したい課題、実現したい未来…創業時のノートや企画書を読み返し、当時の熱い想いを再確認しましょう。当時の情熱を思い出すことで、困難に立ち向かうエネルギーが湧いてくるはずです。
顧客の課題解決への情熱を再確認する
新規事業は、顧客の課題を解決し、価値を提供するために存在します。顧客からの感謝の声や、サービスを利用して変化した顧客の姿を思い出すことで、自分たちの仕事が社会に貢献していることを実感できます。顧客の課題解決への情熱を再確認することで、困難を乗り越えるモチベーションが向上します。
【参考:アントレプレナーシップと情熱】 起業家が事業を継続する上で、事業に対する「情熱」や「自己効力感」が、困難に直面した際のレジリエンス(回復力)に影響を与えることが指摘されています。事業の核となる目的意識(パーパス)が、長期的な動機付けの源泉となります。
参考文献: Baum, J. R., & Locke, E. A. (2004). The relationship of entrepreneurial traits, skill, and motivation to subsequent venture growth. Journal of Applied Psychology, 89(4), 587-598.
困難を乗り越えた先の未来を想像する
新規事業が成功した時の未来を具体的に想像してみましょう。顧客が笑顔でサービスを利用している姿、社会に貢献している実感、そして、自分自身やチームメンバーが成長している姿…困難を乗り越えた先の未来を想像することで、希望が生まれ、再び前向きな気持ちになれるはずです。
2. 完璧主義を手放し、小さくても良いから成功体験を積み重ねる
新規事業は、不確実性が高く、計画通りに進まないことが当たり前です。完璧主義に陥ると、理想と現実のギャップに苦しみ、なかなか成果が出ない状況に心が折れてしまいます。
50点でOK!完璧主義からの脱却
完璧な計画や完璧なサービスを目指すのではなく、「50点でOK」という意識を持ちましょう。まずは、必要最低限の機能や品質(MVP: Minimum Viable Product)でサービスをリリースし、顧客からのフィードバックを受けながら改善していくというアプローチが重要です。完璧主義を手放すことで、行動が早くなり、成功体験を積み重ねやすくなります。
【引用・参考:リーン・スタートアップ】 新規事業においては、完璧を目指すのではなく、「構築(Build)→計測(Measure)→学習(Learn)」の学習のループを回し、市場から早期にフィードバックを得るアプローチが推奨されています。これは、リソースの浪費を防ぎ、不確実性下での成功確率を高めるための重要な指針です。
参考文献: 『リーン・スタートアップ:ムダのない起業プロセスで成功をつかむ』 (原題: The Lean Startup) 著者: エリック・リース (Eric Ries)
小さな成功体験を積み重ねる
大きな目標を達成するためには、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。例えば、新規顧客獲得、売上目標達成、顧客からの高評価など、小さな成功体験をチーム全体で共有し、喜びを分かち合いましょう。成功体験は、自信を高め、さらなる挑戦へのモチベーションを高めます。
失敗から学び、改善を繰り返す
新規事業においては、失敗は避けて通れないものです。しかし、失敗を恐れるのではなく、失敗から学び、改善を繰り返すことが重要です。失敗の原因を分析し、改善策を実行することで、サービスやビジネスモデルをより良いものにすることができます。失敗を成長の機会と捉え、積極的に挑戦しましょう。
【参考:組織的学習】 イノベーションの研究では、失敗を罰するのではなく、「組織的学習」のプロセスとして、失敗を内省し、知識として蓄積する文化が、組織の長期的な競争力とイノベーションの継続性に不可欠であるとされています。
参考文献: Argyris, C., & Schön, D. A. (1978). Organizational learning: A theory of action perspective. Addison-Wesley.
3. 仲間との繋がりを大切にし、助けを求める
新規事業は、孤独との戦いでもあります。一人で悩みを抱え込まず、仲間との繋がり(ソーシャルサポート)を大切にし、積極的に助けを求めることが重要です。
チームメンバーとのコミュニケーションを密にする
チームメンバーとは、目標や課題を共有し、互いに協力し合いましょう。定期的なミーティングやインフォーマルなコミュニケーションを通じて、チームの結束力を高めることが重要です。困った時は、遠慮なく相談し、助けを求めることで、解決策が見つかることもあります。
【参考:チーム・ダイナミクス】 新規事業チームにおいては、オープンで信頼に基づいたコミュニケーションや、互いの知識・情報の共有(ナレッジ・シェアリング)が、問題解決の速度とイノベーションの質を高めることが研究で示されています。
参考文献: Nonaka, I., & Takeuchi, H. (1995). The knowledge-creating company: How Japanese companies create the dynamics of innovation. Oxford University Press.
メンターやアドバイザーに相談する
経験豊富なメンターやアドバイザーは、あなたの事業の課題や悩みを理解し、適切なアドバイスをしてくれます。客観的な視点からアドバイスをもらうことで、新たな気づきや解決策が見つかることがあります。積極的にメンターやアドバイザーを活用し、事業の成長を加速させましょう。
家族や友人に話を聞いてもらう
家族や友人は、あなたの心の支えとなる存在です。事業の悩みや不安を打ち明けることで、心が軽くなり、新たな気持ちで再スタートできることがあります。また、家族や友人からの応援は、困難を乗り越える大きな力となります。
【参考:メンターシップとソーシャルサポート】 メンターシップやピアサポートなどのソーシャル・ネットワーク(社会的ネットワーク)は、起業家個人のストレス軽減だけでなく、事業に必要な情報やリソースを獲得する上で極めて重要な役割を果たすことが、アントレプレナーシップ研究で繰り返し強調されています。
参考文献: St-Jean, E., & Audet, J. (2012). The role of social support in the entrepreneurial intention process. Journal of Small Business and Entrepreneurship, 25(3), 329-346.
新規事業は、困難の連続ですが、それを乗り越えた先には、大きな成功が待っています。心が折れそうになった時は、上記の3つの視点を参考に、再び情熱を燃やし、挑戦を続けてください。あなたの事業が成功することを心から応援しています。